「最強の詩」(宮田大介)の感想 既刊1巻
この記事はこんな人におすすめ
・競技未経験のフィジカルモンスターが好き
・良きライバルがたくさん出てくる漫画が好き
  • タイトル…最強の詩(さいきょうのうた)
  • 作者…宮田大介さん
  • 出版社…集英社
  • 掲載誌…ジャンプ+(タップで開きます 第1話~第3話が無料公開中)
  • 既刊1巻
  • 是非電子書籍で!…電子書籍版は「ジャンプ+連載時のカラー」がそのまま収録されるのですが、これがとても良いんです!見開きも素晴らしいので、タブレットやPCで読むと本当に最高です

私は、2015年のラグビーW杯「日本対南アフリカ」での日本の勝利以来、ラグビーファンになりました。あの試合後、NHKなどで放送された密着ドキュメントを見て「奇跡など起きないスポーツだ」と理解したからです。
負けるときは100-0みたいなスコアで負ける、そんな無慈悲な競技。しかし、
それは言い換えれば「どんな最強が相手でも、勝利するための道が必ずある」という意味でもある。とても魅力的です。

それ以来、私はずっと「素敵なラグビー作品(漫画やアニメ)」を探しています。この9年間で様々な作品に出会いました。
その中で私のイチオシは2020年に放送されたアニメ「number24」でした。もっと盛り上がってほしかったのですが、残念ながら他の人気スポーツアニメのようにはいかなかったようで「知る人ぞ知る」のまま終わってしまいました。興味のある方は是非、調べてみてください。

そんな中、なんと今!とても素晴らしいラグビー漫画が2つも連載されているのです!しかもどちらも始まったばかり!
1つはヤングマガジンの「ONE FOR ALL
そしてもう一つがこの「最強の詩」なのです!!

・泣きたくなるほど全肯定!

絵もキャラもストーリーも、とにかく読んでいて気持ちが良い。それが今作最大の魅力です。
挫折した者、勇気が出ない者、詳しくない者、負けた者。そんな人達でも、絶対に誰かが支えてくれて、称えてくれて、激励してくれる。
ラグビーの「ノーサイド」の精神がそのまま漫画になったかのような気持ちよさを、是非感じてください!!

・ジャンプ+のコメント欄は必見!

ジャンプ+という媒体は
「良い固定ファンが付けば、コメント欄までしっかり読みたくなる(その逆もあり)」
という特徴があるところだと思っています。
この作品はラグビーを題材にしているので「細かなルールが分からないから…」と敬遠してしまう人も多いかもしれません。しかし安心してください。

今作には「とても優しい経験者のファン」がたくさん付いてくれているので、コメント欄に解説や体験談がたくさん書かれています。
未経験者であってもそれを読むことで理解度が増すので、是非とも最新話からはジャンプ+で読むことをオススメします!
それではプレゼン、いってみましょう。

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・最強の詩ってこんなお話

この作品、分かりやすく説明すると

・ド田舎で鍛えられたトンデモ身体能力の主人公・山田金山(キンザン)が「最強」を求めて陸善高校ラグビー部に入部。
しかしそこは「ゆる部」と呼ばれる、勝利よりエンジョイを重視する部活で…?!

という内容。
今作の面白いところは、このお話の中では「U-15ラグビーW杯で日本代表が初出場・初優勝している」ということ。
つまり「中学3年までのラグビー選手は世界最強」なのです。

かなり大きく出た設定とは思いつつも、実際に高校野球は世界最強ですし(異論があることは認めます)、日本が南アフリカに勝利した過去もある。
日本人の体格でも「最強に勝つ理由」は存在する。
このまま日本がラグビー強豪国を維持できれば、時間はかかるかもしれないが「絶対に不可能」とは言い切れないライン。これが凄い。

それがどう、本編に繋がるのか。
その日本代表は「完璧な一団(パーフェクト・スカッド)」と呼ばれています。なんと作品の舞台であるラグビー強豪県の福岡県には、スカッドが12名もいるのです。
各高校に数名ずつスカッドがいるため、スカッドの居ない高校は県予選で勝ち上がることすら困難。
だから陸善ラグビー部も、最初から「俺達はどうせ負けるから、エンジョイで良いよね」ということになるのです。

そこに現れたフィジカルモンスター・キンザン。
なんと、陸善ラグビー部の部長であるキヨシは「スカッドの最終選考まで残りながらも、のちに世界一となる天才たちとの実力差を見せつけられ挫折した男」だったです。
「凡人たちが天才に挑むことの愚かさ」を知る男、そして「勝利を諦めた部員」たち。そんな中に「スカッドの凄さ」を理解していない身体能力の化け物が入ってきてしまう。
「こいつと一緒ならあるいは」「いや、どうせ無理だ」「ラグビーはそんな甘くない」という葛藤を尻目に、キンザンは彼らに現実を見せつけてしまいます。
「キンザンとなら勝てる」「キンザンとラグビーをやると楽しい」という現実を。
そう、最強に勝てる理由それは「キンザンという化け物」だったのです。

他にも
・心底「嫌な奴」が今のところ出てこない
・「フィジカルだけの化け物」を周囲が馬鹿にしない
など、オススメしたいポイントはたくさん。
「もうちょっとだけ話して良いよ」という方は、こちらも読んでもらえると嬉しいです。

もうちょっとだけ良いですか?

・心底「嫌な奴」が今のところ出てこない
私はどうしても、スポーツ漫画にたまに出てくる「わざと相手を怪我させるチームや選手」が出てくると「勝ったときの爽快感」よりも「試合中の不快感」が勝ってしまいます。
しかし今作は、性格の悪そうなキャラもちゃんとキンザンや陸善ラグビー部を認めてくれる描写があって助かっています。

・「フィジカルだけの化け物」を周囲が馬鹿にしない
ラグビーのルールは複雑で「よく理解していない選手も多い」という話を聞いたことがあります。
そういうところも関係しているのか、この作品はとにかく「強い奴」がキンザンを認めてくれます。
「あぁ、キンザンは今日も『気持ち良く』でラグビーやれているな」というのが伝わってくるので、私もとても気持ちが良いのです。
しかも、話が進むとちゃんと「この先はフィジカルだけでは勝てないラインだ」という描写も。
キンザンがラグビー選手になっていく過程を、敵味方関係なく見守っていきます。
それは「ラグビー未経験の読者」であっても同じで、キンザンを通して「ラグビーの奥深さ」を知ることが出来る。とても素晴らしい構成になっていると感じます。

・絵柄の説明

とにかく見やすく、格好良い絵柄が魅力の今作。迫力あるタックル、イキイキとした表情、キャラの描き分けなど、絵柄に関しては褒める所しかありません。

ラグビーは、大学生になるまで「ヘッドキャップ」というものを被って頭を保護しなくてはいけません。今作でも試合のシーンになるとみんなヘッドキャップを付けるのですが、キャラの顔が個性豊かなのでちゃんと見分けがつくのです。
これはシンプルなようでいて「ラグビーのルールを知らない読者」からすると、とてもありがたい。
ルールが分からないのに「あれ?ここにいるの誰だ?◯◯かと思っていたら違う…?」となってしまうと、それだけで集中できなくなってしまいますから。

ラグビーシーンにおける、「ステップやタックル」がとても格好良く描かれてるというのも良いですね。細かなルールが分からずとも、ただそれだけで「ラグビー」そのものの魅力を感じることが出来るので。

まずは「絵柄の格好良さ」「タックルがどのくらいの迫力で描かれているのか」を実際に見て確かめてみてほしいと思います。

本ページの情報は24年5月時点のものです。最新の情報はU-NEXTサイトにてご確認ください。

・電子書籍サービスおすすめ10選

連載中の漫画のため、1巻ずつ感想を書いていきます

1巻は何と言っても第1話の、カラーで「アイツ」が粉々に砕け散るシーンですね。
キヨシはとても良い人なので、現状を総合的に判断し、自分であの幻影を壊そうとはしません。部員全体で全力で挑めば、もしかしたら…と思うのですが、他のみんなを巻き込もうとはしない。
しかしそこにやってきたキンザン。あのシーンは「キンザンのタックルで、キヨシごと押し込んで『アイツ』が砕ける」というのが更に良い。
2人だから壊せた、同時にキンザンが嫌っていた「平穏な日常」が砕け散ることも意味する。
ワクワクが止まらない、お手本のような一話に「カラーの使い方」も効果的。何度も読み返したくなります。

そして最初のスカッド、三國。私は本来、こういうタイプは「相当なことをやってくれないと、最初の印象をひっくり返せない」と感じます。
しかし三國は、試合後にちゃんと負けを認めています。あの場面は、記者の籠山が話した「雑に勝負した」を言い訳に使い「本気ではなかったから負けただけ」と逃げることも出来た。
しかし三國は100%どころか120%出したのに負けた、と笑顔で認めている。かなり早い段階で「性根の良さ」が明かされて安心です。
スカッドの中にはもっと悪い性格の選手がいるのか、全員良い奴なのかどちらでしょう。
もし「性格の悪い奴」がいても、作者である宮田さんなら良いバランスで描いてくれるのでしょうか。

ジャンプ+のコメント欄ではなぜかヒロイン扱いされている岸先生も、絶妙なバランス感覚の上で描かれています。
練習のどこかで「元プロの凄さ」を見せつけてほしいところです。
太る前はめちゃくちゃ格好良かった感じの雰囲気も出していますし…。

まだ単行本1巻が出たばかりの今作。2巻収録分のお話では新キャラも登場しますし、とても良い展開が待っています。
最新話周辺ではスクラムなどで活躍する「フォワード」の重要性を丁寧に描写してくれていますし、とにかく見どころたくさん。
今からでも余裕で間に合うと思うので「まだこの作品知らないよ」という方は、是非ジャンプ+で3話まで読んでみてください。

ちなみに学校、職場、家族の中にラグビー経験者がいるという方。
迷惑にならない範囲で、今作の分からないところを聞いてみるのも良いと思います。
私の場合、職場の後輩に「あと一歩で全国だった」という元ラガーマンがいるのですが、私の質問に対してめちゃくちゃ丁寧に解説してくれます。
「最初の練習試合でキンザンがウィングを担当した理由」や「ナンバーエイト、ラインの解説」などを聞くと、グッと今作の解像度が上がります。
この漫画きっかけでラグビーの試合を見てみる、というのも面白いかもしれませんね。

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